気まぐれな管理人による雑文サイト。Web小説「Rebirth」連載中 (笑)

~過去への恋文~ Date: Sat, 13 Jan 2001 16:04:18 +0900

2018年3月11日  2018年4月18日 
無機質なディスプレイに浮かぶ数字は、あなたから初めて届いたメールの日付だ。

わたしにとって、とてもたいせつな意味を持つ日付。
ミレニアムに沸き立っていた、あの日の心の高ぶりを、まるで昨日のことのように思い出すことができる。
その日を境に始まった5年に渡るやり取りのうち、いま手元に残っているメールは516通。
1と0に変換された、デジタルデータのファイルサイズは1.32MB。

――あれだけのやり取りを交わした記録が、たったフロッピーディスク一枚分にも満たないなんて。

わたしの記憶に占める「あなた」の大きさと、出力された「データ」の小ささ。
そのアンバランスさに、脳が著しく混乱してしまう。
まるで肉体を荼毘に付した後、残った骨を拾い集めた後の虚無感のようで。

――胸が、胸の奥が、とても苦しい。

ドキドキやズキズキを通り越して、ぎゅうっと心臓を握りつぶされるかのようで。

――言葉にならない。

心の底から辛いとき、人は言葉が出ないのだと言う。
それでもわたしは、あえて心の奥底の、さらにその下の深淵から湧き上がる、むせ返るような今の気持ちを言葉に残しておきたいと思った。

目の前に浮かび上がっているメール。
思いがけずして、つい今しがた過去から届いた手紙のような風を装っていて。
今わたしが「返信」ボタンを押せば、返信メールを作成することすらできるのに。
それなのに……。

わたしは過去にメールを送る術(すべ)を知らない。
そんな術がある訳もないし、あってはいけない。
常識ある大人なら誰もが知っている「当たり前の事実」が、わたしの心を「これでもか」と締め付ける。

――判っているのだ。

何年も封印していた気持ちが、文字を眺めるたびにムクムクと膨れ上がってあふれ出す。
わたしが苦しむことを、あなたが望んでいないことは重々承知している。
それでも、わたしがあなたを想うたび、わたしの心は悶えてしまう。
一方わたしに為す術は何も残されていなくて、その機会が永遠に失われた現実はとても残酷で。

失恋することすら許されないなんて、これじゃまるで永遠の片想いではないか。

たまらなくあなたに会いたい。
あなたのことばに触れたい。
それが叶わない望みなら、せめて「大好きでした」と、一度でも良いから伝えたい。

そんなささやかな願いすら叶えさせてくれないあなたは、とってもズルい。



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bell(@bellstown21
いろんなこと書く人。比較的なんでも食べます (笑)
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